第5回ワークショップの記録

三井寺(園城寺)の護法善神堂の堂内に多くの土人形が納置されていることが知られるようになったのは十年くらい前のことである。それらはわが子の健やかな成長を願って、子供を守ってくれる護法善神堂の鬼子母神に奉納されたと考えるのが自然であろう。そのような習慣がいつごろから行われていたかは記録もなく不明であるが、納められた人形から判断すると近代に入ってからのようである。それらは伏見人形の系統を引くものと考えるが、どのようなルートで入手され、奉納に至ったか明確でない。ただし、さまざまな人形が残るところをみると、それぞれの親たちが土人形を求めて窯元まで出向いたとみるよりは、受容があって大津町で入手できる環境が整っていたように思われる。ちなみに、子供の成長を願って神仏に人形を納める習慣は、滋賀県下では、大津市内の宇佐八幡宮(むし八幡)の土鳩、草津・守山の猩々(張子人形)、安土・轟地蔵堂の千躰地蔵(土人形)などがあるが、今となってはその存在や風習を知る人は多くない。人知れず護法善神堂に伝わった土人形の種類・造形を眺めながら、神仏に奉納される人形のありようについて考えてみたい。